書評 『スターバード・ビュー』

神話をベースに、現代日本を舞台としたファンタジー

人間はどこから来たのか。そんな問いかけにいきなり答えるのが『スターバード・ビュー』という作品だ。

この作品では、人間は人間ならざる存在によって星々を移動している。

SFに寄れば異星人や異次元の存在による植民あるいはほとんど支持されていない進化論に準じた原生生物からの進化が、ファンタジーに寄れば流行にもなった神や魔法の力による召喚・転生というものが想像できる。

が、本作はその部分をあえて野生のやり方で人間を連れてきた。そう題名にもある通り、スターバードである。本作では、その存在を「星鳥」や「星渡る鳥」など様々な呼び方で表している。

鳥が人間を運ぶと聞くとコウノトリの伝説を思い出す方もいるだろう。まさにその通りだ。ウルトラマンシリーズの宇宙怪獣と呼ぶにふさわしい大きさの鳥が来襲して、人間をかっさらっていくのだ。

この星鳥は人間の事情などお構いなしで、自分の繁殖のために人間へ精子となる羽を託して別の星へ送り込む。その羽を託された人間は、星鳥の繁殖のために行動せざるを得なくなるのだ。

羽を託されただけで、人間が星鳥のためにすんなりと働くのかと疑問に思うだろう。星鳥は神話や伝説という形で星ごとに残されていることになっている。そう、ここで神話と鳥の関わりがこじつけられているのだ。人間は鳥に導かれて新天地へとたどり着く。そんな風な神話を持った人間が物語りの中心になっている。

彼らは信仰を原動力として、とにかくスターバードの繁殖を成功させるために行動する。そんな彼らにファンタジー要素が付随する。「第二の○○」という超能力を持っているのだ。

ある者はその力で食人族という驚異を生み出し、一県を丸々封鎖させている。ある者は失われた言霊の使い手で好奇心のままに日本を旅する。ある者は予知能力を駆使して物語を誘導していく。能力者はスターバードの物語を成立させるために行動しているのだ。

主人公は、能力者達に導かれることになるのだが、自分のことばかり考えてしまうので終始葛藤ばかりである。それがくどいと思う読者もいるだろう。

読後は爽やかであるが、少し寂しさも感じる。前向きな終わり方をしていると思う。最後の部分に古事記にある有名な話の自己解釈が書いてある。我ながら面白い解釈だと自負している。興味を持ったのなら読んで欲しい。